第71期名人戦七番勝負第4局 【森内俊之名人 vs 羽生善治三冠】の棋譜と感想

昨日の第4局初日から引き続き、大分県速見郡日出町「的山荘」にて、第71期名人戦七番勝負第4局【森内俊之名人 vs 羽生善治三冠】が行われました。約2時間半の大長考の末、封じた一手は予想通り△3五同歩でしたね。

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93手で先手:森内名人の勝ち。

封じ手だった36手目△3五同歩、他の選択肢としては△6四角やニコ生解説の阿久津主税七段が予想していた△4五歩などがありましたが、終局後の感想戦で羽生三冠は「予想していなかった作戦で、組み上がって封じ手で長考したときに苦しくなった気がした。後手で一手遅れているので、つまらない将棋になってしまった。」とコメントしている事からも封じ手の局面で既に苦しい大長考だったようです。

阿久津七段も「△同歩なら封じ手の局面で大長考した理由がわからない」みたいな事を仰っていて、私も「そうだよな~」なんて納得してましたが、やはり羽生三冠でも森内名人を相手に後手番で一手損は自信が無かったという事でしょう。封じ手の局面で形勢は互角に見えてもトップ棋士同士の対局だと一手の損得で形勢が大きく違ってくるのかもしれません。

46手目△6五歩、もし▲同歩なら△3九角から馬を作って後手が指しやすい展開。52手目には△3九角となりますが、△3九角を打たせるまでの森内名人の指し手が上手かったですね。47手目▲5五歩、反対に△同歩で▲6三角で先手から先に馬を作りにいく順もあったと思いますが、5筋を突き捨てて49手目▲2四歩。△同歩は継ぎ歩から右桂を活用されるので、ほぼ同銀の一手。それから▲6五歩と6筋に手を戻します。△3九角は打たれても、すぐに47手目▲同歩とするよりも味付けができるところ、もしくはこのタイミングでしか突き捨てが入らないところは突き捨てるという流石の中盤戦でした。

54手目△7五角成から更に森内名人の手厚さが際立つ中盤・終盤戦になりましたね。55手目▲5五銀、6五歩を受けるだけなら▲6六銀などで馬に当てながら指したいところですが、次に▲6六銀上、▲6六銀引、▲6六角など飛車先を通す手や▲4四銀を狙いつつ馬を消しにいく手など含みが多い手を選択しましたね。

羽生三冠も先手の狙い筋を全て防いでいる56手目△5七歩。これは一度は叩いておきたい歩ですが、森内名人は冷静に▲同金。56手目▲5六金、後手としては先手の飛車先を重くした、先手は5筋に厚みを作ったという両対局者の主張がある局面だと思いました。

61手目▲5四歩、更に飛車先が重くなって指し難い手だと思いましたが、△5二歩では飛車の横利きが消えて利かされなので指されてみると難しい勉強になる一手。

67手目▲5五金に対して△5七歩、▲5五金に対して馬が逃げると予想していた阿久津七段。確かにここで馬が逃げるようなら、どこだろ、馬を作りにいった52手目△3九角、もしくは角成のラインを作る46手目△6五歩あたりが疑問手になる可能性があり、勢いは攻め合いなのですが、やはりこの局面での馬飛車交換で形勢は先手に傾いたように思います。

73手目▲5三歩成、終局後の感想戦で森内名人は「5筋に垂らした歩がと金になって少しよくなったと思った。」と語っているように、ここからは阿久津七段の解説通り、比較的簡単な寄せだったような気がします。以下、一手違いか一手違いにもならない終盤でしたが、なかなか投げない羽生三冠を見て、「羽生さんなら逆転するんじゃないか」という期待や本局に対する意気込みが伝わってくる粘り強さが印象的です。

一局を振り返ってみると、初日封じ手の局面では序盤から前例が少ない力戦形で中盤の捻り合いになると先後の勝率よりも単純に強いほうが勝つと思ってましたが、「序盤は作戦だった。穏やかに進んで一手得することができ、まあまあかと思った。」という終局後の森内名人のコメントを見ると明らかに作戦勝ちだったようです。「名人に定跡なし」という格言通りの内容だったと思います。

これで森内名人の3勝1敗、名人防衛に王手をかけ、羽生三冠としては非常に苦しい対戦成績になりました。第5局は5月30・31日(木・金)、愛知県名古屋市「ウェスティンナゴヤキャッスル」にて行われますが、第5局は羽生三冠の先手なので羽生三冠が勝って最低でも第6局までは観たいですね。

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